らはいむ

「GATTACA」

ガタカ
/ ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
スコア選択: ★★★★





いや映画ってホントいいですね。って、どこかの解説者さんの口癖が心に浮かんだ。見て良かったな、と思える映画に最近出会ってなかったし、しかも映画そのものから遠ざかっていた。でもこの作品を見て、また少しづつ映画を楽しんで行こうと思った。

この不思議な充足感をどう表現したらいいかわからなくて、暫く感想を書けなかった。一緒にレンタルした恋愛映画の悪口はすぐに書けたのに。

でもどうしても書き残したいから書く。いつもながらネタバレ全開です。











殺人事件が起こったとき、ありがちの主人公追い詰め型のサスペンスものかよ、と興醒めした。せっかくマイケル・ナイマンの音楽をバックに、とても素敵な雰囲気で始まったのに。しかも私はこの時点でヴィンセントを全く信用していなかった。台詞をよく聞けばそうではないとわかるはずなのだが、そうは言っても、犯人はオマエだろ、オマエ、とハナから疑ってかかった。でもこの事件そのものは実にあっけない解決を迎え、拍子抜けしてしまった。そう。これはサスペンスものではない。そしてこの事件は、もっと早くに気付かなくてはならないある人物の存在から目を逸らせる目くらましにもなる。そして主人公とその周辺の人物を描くために、情況を動かす装置の一つとなる。殺人事件そのものと、それを軸にした物語作り(例えば誰が殺したか、なぜ殺したかをテーマとして物語を動かす)は嫌いだが、こういった使い方は、不謹慎ながら、とても好ましい。

物語もセットも音楽も非常にシンプルで無機質にも感じる。粗筋なんて3行で書ける。演技者もクールビューティ。でも「人間」がいる。苦悩、渇望、希望、悲哀といった無様な人間臭さ。そんなものを暑苦しく描かれたら、とても見られたものではないが、そこをクールに描いている。だからといって、かっこつけて、スカして、哲学ぶって、突き放した作りの、これまたありがちの映画でもない。冷たい無機質な空間に、かすかに残る温もり。この絶妙な距離感が、とても好き。

この無機的空間で感じる、妙に有機的なリアリティはいったいどこからくるのだろうか?遺伝子操作は現実のものとなり、GATTACAで設定した「そう遠くない未来」が現実のものとなりつつあるからか?きたる遺伝子操作社会に警鐘を鳴らした作品だから?・・・そうではないと思う。そんな説教臭さは感じなかった。遺伝子操作社会に警鐘を鳴らしたところで、どうなるものでもないような気もするし、なっても、この映画の役割ではないと思う。描こうとしたのは、もっと深い本質的なもの。遺伝子操作は状況設定の一つに過ぎず、大変興味深いトピックではあるが、メインテーマではない。

クサい使い古しの表現を使うなら、「人が人であるとは」「自分とは何か」。ある意味普遍的なテーマ。このようなことを鑑賞後考え込むことができたのだから、それだけでも価値がある。

ここから、3人(+1?)のメインキャラ別に感想を書いてみる。



アイリーン

彼女のクールビューティさにはクラクラ。きっと体温34・7度くらいに設定されているのだろう。もしかしてアンドロイド?と思わせるような外見。サスガはコーディネーター、もとい「適格者」。この人間離れした硬質的な美しさ。でも彼女も人間。女。

より優れた遺伝子を後世に伝えるため、より優秀な遺伝子をもった異性をパートナーとして求める。人を好きになるきっかけとして、よく言われること。それを言っちゃあ、お終いだろとは思うものの、とても納得できる。(笑)

でも、一方で、自分の抱える「穴」を誰かに見出した時、その人に魅かれることもある。上の優秀遺伝子論?には矛盾するけど。この気持ちもよくわかる。ああそうですよ、第3者に「傷の舐め合い」だと一刀両断されましたけど。(拗)

遺伝子操作されて生まれてきたにも関わらず、バグを抱えたアイリーン。GATTACAに入社できても宇宙には行けない。飛び立つロケットを見上げて生じるのは、宇宙への憧れと不完全な自分へのやるせなさの入り混じった複雑な感情。ふと視線を移すと、自分と同じように飛び立つロケットを見上げる同僚がいた。

その姿に、彼女は自分の抱える「穴」を見出したのかもしれない。だが彼は完璧な遺伝子を持つと評判のトップエリート。彼女は彼の遺伝子情報をこっそり確認する。噂通りの結果。やったわ、これこそ私のパートナーにふさわしい優秀な遺伝子よ、絶対ゲットだぜ!・・・とはならずに、彼女はため息をつく。

この描写が、とてもうまいなと思った。この硬質的なアンドロイド系美女に、バグいっぱいのINVALIDな私が、おこがましくも感情移入しちゃったよ。



ヴィンセント

アイリーンが嗅ぎ付けた穴は、実は本物で、しかも彼女が感じた以上に大きいものだった。

自然交配で生まれたINVALID。非・適正者。「神の子」は、この世界では差別用語。ああ、別にこの世界でなくても、そうか。差別用語っていうのは、美しい言い換えの偽善臭がウリ。「神の子」いいねえ、偽善臭プンプン。合格。・・・。私は偽善に包まれた婉曲な言い回しより、直接的なほうが好きだけど。でもだからといって、INVALIDは、かなり堪えるかな。

彼はINVALIDたる鑑賞者の分身。意志の勝利。定めからの解放。希望。彼は主人公であり、彼が苦悩する様子にスポットライトが当てられている。同時に、周りを取り囲む「適正者」たちの苦悩も浮かび上がらせる。この人間を描く「光」の当て方も素晴らしい。

鑑賞者は、VALIDとINVALIDの文字を入れ替わり立ち替わり目にする。そのうちに何が「適正」かそうでないか、わからなくなってくる。

非ー適正者ヴィンセントはもういない。適正者ジェロームは宇宙へ旅だった。ヴィンセントの存在は、弟の呼び声に残響するのみ。



ユージーン

適正者として定められた存在。その中でも特に秀でた傑作。それなのに超えられない壁。適正者ジェロームの苦悩。ジェロームは「ジェローム」をあけ渡し、セカンドネームを名乗る。

不適正者ヴィンセントは適正者ジェロームに摩り替わる。だが遺伝子情報まで摩り替えることは不可能だから、不適正者ヴィンセントのカケラを擦り落とし、それを焼却処分する。ユージーンは「ジェローム」をヴィンセントに明け渡したものの、適正者のカケラを提供し続ける。この時点ではまだ、ユージーンは「ジェローム」の本体だと言える。時にユージーンは、「ジェローム」の本体として、第3者の前に現れ、状況を乗り切ったりもする。

だが。

最終的にINVALIDがVALIDに転じた瞬間。ヴィンセントは完全に「ジェローム」となり、宇宙への扉が開かれる。完全に「ジェローム」を明け渡したユージーン。ユージーンは「ジェローム」の本体ではなくなった。もはやユージーンは「ジェローム」のカケラ。必要な分のカケラは用意した。だから後の「残り」は焼却処分する。かつてヴィンセントのカケラを処分した同じ場所で。「ジェローム」を宇宙に送るロケットの点火と同時に。

INVALIDとVALIDの逆転。本体とカケラの逆転。何だかモノスゴイものを見せられた。

ユージーンは、かつて人類の「夢」を背負った「ジェローム」と同一体だった。しかし彼は自分の「意志」で捨てた。「定められた」はずの存在の「定められない」行動。そこに苦悩が、意志が存在する。ヴィンセントとは表裏一体の関係?ヴィンセントは「超えられるはずのない」ものを「超えて」宇宙を目指そうとする。そこにも苦悩と意志が存在した。ユージーンは1度捨てたはずのものを再び見出す。

炎の中の銀メダル。それはユージーン=ジェロームの苦悩と意志の象徴。最期に「救い」はあったのだと、宇宙へ向うロケットともに彼の「魂」も旅立てたのだと・・・信じたい



「ジェローム」

結局、ジェロームっていったい誰?



実はここまで書いて、もう一度、見なおした。ここまでの解釈おかしいですね。(あくまでも個人の感想を書いているだけで、正しい解釈云々を問題にしているわけではないのだが。)書いてる内容も意味不明。自分で読み返しても、自分で何書いたんだかわかりません。

最後の場面で感じた、静かな衝撃と感動を何とかうまく表現したかったのだけど。やっぱりヴィンセントはヴィンセント、ジェローム・ユージーン・モローはジェロームのまま、旅だった。というか「帰還」したのだから当然か。

アイリーンがヴィンセントに魅かれた理由もかなり曲解しているかも。遺伝子情報を調べてついたため息は、そんなことをしてしまう自分に嫌気がさしただけかも。私は、勿論それもあるが、自分と通じる「穴」を探そうとしても発見できなった、ため息と思ったのだけど・・・。


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アントンなど他の登場人物についても触れたいのだが、いったんここで筆を置く。

あー、いい映画見た。嬉しかった。オススメです!








私の映画に関する好き嫌いが見えた気がするので、最後に小さくまとめておく。

※殺人事件もの・サスペンスもの嫌い。ホラー・スプラッター論外。
※人間の暑苦しさを暑苦しく描いた映画も嫌い。
※だからといって妙にスカシてクールぶった映画も嫌い。
※説教クサイ映画も嫌い 。

私を映画に誘うときは、以上の点に気をつけてください。ハリウッド超大作!はともかくアカデミー賞〇部門受賞!金獅子賞受賞!というのも好きです。賞を取るというのは、いろんな意味で価値あること。ネームバリューはバカにならない。確かに面白い作品多いし。つきぬけたコメディーも大好きですのでよろしく。(誰に言ってますかぁ?)
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by ruthk | 2005-02-10 06:53 | えいが

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